冬のことのは



季語 1     冬霞 (ふゆがすみ)

〔冬の霞・寒霞〕

霞と靄(もや)が区別しにくい方もいますが、霧の薄いのが靄であるのに対し、霧の法は、薄い霧も含めて、黄砂や煙などが混じって、遠景がぼんやり見える現象で、春の季語にもなっています。
風のない冬の朝、夕にこんな光景が見えます。


季語 2     霜夜 (しもよ)

寒いとか冷えるといった言葉より実感の込もるのが霜夜です。
夜が更けるに従って、外から霜がピシッピシッと繁まる音が聞こえそうな冷え込みです。


季語 3   空風 (からかぜ)

〔空っ風〕

日本海に雪を降らせた季節感は、山脈を越えて乾いた風となり吹き下ります。
特に関東でこう呼ばれていますが、赤城颪(おろし)で知られる上州のの名物は「かかあ天下に空っ風」となっています。
「かかあ天下」の方は、働き者で「かかあ天下一」と自負しますが、いったんこの風が吹き始めると、砂塵を巻き上げ、家の中までも砂が入ります。
この風も「空風と日雇いは日暮れまで」のことわざ通り、夕方にはぴたりと止まり、底冷えの夜となります。


季語 4   隙間風 (すきまかぜ)

〔ひま洩る風〕

多くの冬の風とは違い、この風は生活の中の風です。
今でこそ見られなくなりましたが、かっての日本家屋は隙間だらけでしたから、この風に悩まされ、冬の備えに目張りをしたり、北窓を塞ぎました。


季語 5   冬野 (ふゆの)

〔冬の原・雪原〕

枯野といえば枯れ果てた原野しか見えませんが、冬野といえば、その中に常緑樹の緑も点在する農家の生活も見えてきくるし、その中を流れる小川のせせらぎの音も聞こえ、トータルな冬の景が構えられます。


季語 6   凍土 (とうど)

〔大地凍つ〕

寒さの厳しい地方では、地中温度が下がり、地下1Mまで凍ったり、霜柱状になり隆起します。
そのため、鉄路や道路までが浮いてしまいます。これが凍上です。



季語 7   風花 (かざばな)

〔天泣(てんきゅう)〕

雪雲一つ見えないのに、雪がちらついてくることがありますが、これが風花です。
花風で知られる上州では、周囲の山から吹いてくる空っ風に乗って雪国から、この風花が運ばれてきます。


季語 8   山眠る (やまねむる)

〔眠る山〕

雪を冠った山は、すっかり木々の葉を落としした冬山の景は、まさに「山眠る」です。


季語 9   冬木立 (ふゆこだち)

〔枯木立・寒林〕

夏木立の精気旺盛なさまとは逆に、冬木立には荒寥(こうりょう)感が漂います。


季語 10   冬芽 (ふゆめ)

〔冬木の芽・越冬芽〕

春になって花を付ける梅も桃も桜も、すでに秋までに芽が出来ていて、冬には心なしか膨らみも感じられます。
葉を落した頃の、枯れ枯れとした枝とは違い、どこか遠目にも木々の枝に?(みじめ)さを感じます。
芽は形成された後、一時成長を止めて休眠状態になります。


季語 11   冬籠 (ふゆごもり)

冬篭と言っても、世と隔絶して籠ことではなく、寒さや雪のため家に引き籠りがちになるということでしょう。


季語 12   冬座敷 (ふゆざしき)

葦戸を入れ、風鈴を吊り、蚊遣りを焚き、夏座敷から一変し、襖を入れ、手焙りや火鉢が置かれ、そこにかけた鉄瓶から湯気が上がっている風情が冬座敷です。

今ではほとんど見かけない風情かも知れません。


季語 13   年の暮 (としのくれ)

〔歳末・年末・年の瀬・年迫る・歳末〕

12月そのものも年の暮と言いますが、実感としては、暮も押し詰まってからのものです。


季語 14   御用納 (ごようおさめ)

〔仕事納め〕

御用納めはまつりごとの納めのことで、官庁用語です。
12月28日をその日としていますが、民間でもこの日を仕事納めとしています。


季語 15   晦日蕎麦 (みそかそば)

〔年越蕎麦・つごもり蕎麦・運気蕎麦〕

大晦日の晩に蕎麦を食べる風習は、江戸時代以降のものですが、この風習が時代の変った現代でも続いています。 儀礼食、祝い食としての蕎麦ですから大晦日に食べ、引越しの際配られたのでしょう。




■春の章
    【その1】  【その2】  【その3】 

■夏の章
    【その1】  【その2】  【その3】 

■秋の章
    【その1】  【その2】  【その3】 

■冬の章
    【その1】  【その2】  【その3】 




冬 の 章 U