季語 1
草いきれ (くさいきれ)
〔草の息〕
「いきれ」には熱や?(うん)の字をあてますから、蒸されるような暑さのことで「いきる」の名詞形です。
ことに農作業の草取りは、この草いきれの中で行いますから、作業衣の上にまで汗の塩がにじんできます。
季語 2 御来迎 (ごらいこう)
〔御来光〕
高山で迎える日の出をこう呼んでいますが、本当はもっと神秘的な現象から御来迎の名は付けられたものです。
日の出の際、自分の影が後ろの霧に投影され、その影の周りに光環が浮き出ることから、さながら弥陀が光背を負って来迎する姿に見え、こう呼ばれています。
季語 3
片影 (かたかげ)
〔日陰〕〔夏影〕
夏の炎天下ではどうしても物陰を拾うように歩きたくなるものです。
太陽が中天にある時などは、建物や木陰を求めて塀際ぎりぎりを歩いてしまいます。
日陰は木や建物の影ですが、片陰は主に建物の陰を指すときに使います。
季語 4 逃水 (にげみず)
〔地鏡〕
いまの高速道路でもよく見られますが、道路の前方に水がたまっているように見えるのに、そこには水はなく、先へ先へと逃げるのでこの名があります。
蜃気楼と同じ光りの屈折現象です。
季語 5 夏木立 (なつこだち)
〔夏木〕
青葉を茂らせた群れ立つ夏の木のことですが、夏木と言うと一本の木に限定されます。
夏木立と冬木立があって、春と秋の木立がないのは、正気のあふれる夏木と、生気のおとろえた冬木の極まり、人の心を打ってきたからでしょう。
季語 6 蝉時雨 (せみしぐれ)
春蝉は別にして他の蝉は、梅雨明けの頃から鳴き始め、八月にかけてが盛りです。
特に蝉時雨を演出してくれるのは、東日本では油蝉、西日本では熊蝉が主役です。
蝉時雨は本来心地よい鳴き声の部類に入るのですが、炎天下の熊蝉や夜の油蝉の連鳴きは、やや不快音に属します。
季語 7 旱星 (ひでりぼし)
旱続きの夜にふさわしい強い光りの星を、旱星と呼んでいます。
その星のひとつ火星は見えない年もありますが、南の中空に輝くさそり座の首星・赤星はそれに似合った星です。
季語 8 風死す (かぜしす)
風がぴったりと止んで、耐え難い暑さになることで、朝凪(あさなぎ)夕凪(ゆうなぎ)、土用凪(どようなぎ)のような状態を言います。
風死すと擬人法で表現することで、迫真力があります。
季語 9 脂照 (あぶらでり)
〔脂照〕
薄曇で風もない日の蒸し暑さを油照と言います。
油が煮えたぎったような暑さという説もありますが、脂照の表現もあり、脂汗の滲んでくるような暑さをいいます。
季語 10 大暑 (たいしょ)
二十四節季の一つで、小暑から数えて十五日目ですから、陽暦に直すと七月二十三日ごろです。
梅雨も明け土用のさなかですから、字義通り暑さの真っ盛りです。
季語 11 雲の峰 (くものみね)
〔入道雲〕〔積乱雲〕
梅雨明け後の夏空にそそり立つ雲の峰は、いかにも男性的な雲です。
強い日差しの時の上昇気流によって出来る積乱雲ですが、雲の峰、入道雲の呼び名には、どこか自然への畏敬の念がこめられています。
季語 12 炎昼 (えんちゅう)
〔夏の昼〕
夏の暑さを表す言葉にもいろいろあります。
極暑といえば暑さの極みのことですし、溽暑(じょくしょ)は蒸し暑さの表現、炎暑は日差しの強さ、炎(も)ゆは万物のもえるような熱気とそれぞれの使い方は微妙に違います。
季語 13 盛夏 (せいか)
〔真夏〕〔夏盛ん〕
梅雨が明けると、いっぺんに真夏がやってきます。
気温三十度以上の真夏日が四〜五十日続き、加えて特有の湿度の高い日が続きますので、夏の嫌いな方には耐えられない季節です。
季語 14 半夏生 (はんげしょう)
〔半夏雨〕
七十二候の一つで、夏至から数えて十一日目ですから、七月二日ごろが半夏生です。
半夏とは妙な名ですが、烏柄杓(からすびしゃく)の別名で、この植物が生える季節なのです。
季語 15 小暑 (しょうしょ)
二十四節季の一つで、陽暦の七月七日ごろにあたります。
折りしも梅雨の晩期ですから、大雨に見舞われ、梅雨出水をもたらす時期でもあります。
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