春 の 章 U
季語 1
端午 (たんご)
〔端午の節句〕〔五月の節句〕
五月の端の午の日に行われてきたので、端午の節句と言っていますが、後に五月五日に定まってもこう呼ばれています。
このころ咲く菖蒲には邪鬼を払う霊力がある信じられていますから、菖蒲の節句と呼ばれ、なんにつけこの日は菖蒲を使います。
季語 2 若葉 (わかば)
〔若葉風〕〔若葉晴〕〔若葉時〕
太陽の光を透かして見える若葉には、筆舌に尽くし難い美しさがあり、木の種類によってもまた、おのおの独自の色相を持っています。
晴れた日ばかりか雨の風情にも
季語 3 新樹(しんじゅ)
青々とした若葉のことは新緑と言っていますが、その若葉に覆われた木立を差すのが新樹です。
新緑が若葉を見届ける見え方ですが、新樹の法は少々遠目の視点があります。
季語 4 八十八夜 (はちじゅうはちや)
立春の日から数えて八十八日目に当たり、農家では種まきの目安としている節目です。
また八十八夜は一番茶を摘む時季ですが、この日摘んだお茶を飲むと中風にかからないと言う、古い言い伝いもあるようです。
季語 5 夏近し (なつちかし)
〔夏隣る〕
季節が春であっても、強い日差しや木々の茂りの様子で夏を感じたりもします。
夏近しには暦上の夏の接近しか感じませんが、夏隣には肌で感じる夏の予感があります。
季語 6 風薫る (かぜかおる)
〔薫風〕〔風の香〕
青葉の梢をゆすっって吹く南風は青嵐と呼ばれますが、その風が緑の香りを運ぶと見立てたのが風薫るです。
季語 7 竹の秋 (たけのあき)
〔竹秋〕〔かげろい〕
植物の葉が黄ばむと、日本人は秋を感じるらしく、春の竹は地中の竹の子に養分を取られ、四月頃になると葉が一斉に黄ばみ始めます。
これが竹の秋ですが、逆に秋には葉がつやつやとしてきますから、こんどは竹の春と呼びます。
>季語 8 春惜しむ (はるおしむ)
〔惜春〕
暮れる春が情感を抑えた言葉なら、行く春や春の名残には声高な別離の思いが込められています。
季語 9 春深し (はるふかい)
〔春たけなわ〕〔春更く〕
桜の花も散、木々の緑も目立ち、東風の暖かさについ上着を脱いで腕にかけたくなる陽気で、
なたね梅雨も終り、天気が安定し始めるころです。
季語 10 鳥交る (とりさかる)
〔鳥つむる〕〔鳥つがう〕
鳥の交尾が周囲で見られる頃です。
この季節は、求愛のためのディスプレーが盛んに行われ、家の周りにやってくる鳥達にも見られます。
季語 11 雀隠れ (すずめがくれ)
春の草丈も伸びて、雀の姿が隠れるほどになった、の意です。
季語 12 囀 (さえずり)
〔鳥囀る〕
朝の床の中で聞く鳥の声や、木や草が一斉に芽吹き始めた山野を歩いていて聞く鳥の声に、どこか普段と違う気配を感じることがあります。
地鳴きは日常的に聞える鳴き声ですが、囀は主に雄が雌に求愛を呼びかける鳴き声か、テリトリーを示す高泣きです。
季語 13 花祭 (はなまつり)
釈迦の降誕を祝う祭ですが、もともとは浄土宗で潅仏会を花祭りと呼んで四月八日に行っていましたが、後に各宗派でも行うようになった。
季語 14 春眠 (しゅんみん)
〔春睡〕〔春眠し〕
誰にでも見に覚えのあることですが、朝の床離れは難しいものです。
「春眠暁を覚えず」は日本のたとえにもなり、朝寝坊に限って使われていますが、昼間の眠い状態にも言います。
>季語 15 春暁 (しゅんぎょう)
〔春の暁〕〔春曙〕
夜を三つに分けて、宵は夜が明けようとするまだ暗い春の夜明け時刻、次に東雲はうっすらと明るくなった時刻、曙は東の空が明るみ始めたころを言い、春の夜明け。
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