人がいつ、どんなきっかけでコーヒーの実と出合ったのか、確かなことはわからないようです。
ただ飲み物としてのコーヒーの始まりは、15世紀頃とみられています。
アラビアにおいて当初薬だった木の実が、イエメンのイスラム神秘主義者たちの宗教儀式の中で飲料として利用されるようになったのです。
コーヒーの覚醒作用は夜間礼拝の妨げとなる眠気を覚まし、また精神の高揚作用は神に近づく手助けとなりました。
この時点コーヒーは、単なる飲み物ではなく"神聖なもの"という意味を持ったのです。
やがて焙煎という過程を加えて芳醇な香りを獲得したコーヒーは、メッカやカイロ、インドなど広くイスラム文化圏に伝播し、次第に一般家庭でも飲まれるようになりました。
16世紀半ばには、イスタンブールに最初のカフェが誕生します。
寺院という限られた空間からカフェへと躍り出たコーヒーは、嗜好品として社交のシンボルとして、そしてまた流通品としての顔をつけ加えたのです。
やがて17世紀に入ってからコーヒーは、地中海を行き交う旅行者によってキリスト教圏であるヨーロッパに伝ったのです。
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