【 雨 】 【 潤す 】 【 立ちのぼる 】
■ 雨の章
季語 1 木の芽萌やしこのめもやし
春、木々の芽吹きをやさしく見守る雨は木の芽萌やし。
季語 2 花の雨はなのあめ
桜の花にかかる雨を桜雨と言う。 桜の散花を美しく表現する言葉にもなる。 桜を散らしてしまう雨は桜流しと言う。
季語 3 青葉雨あおばあめ
新緑の木々をつややかに濡らす雨は青葉雨。 青葉時雨は、木の葉に結んだ雨水が、何かの調子に落ちることをを言う。
季語 4 村雨むらさめ
村雨のもつ音は美しい。群雨、叢雨とも書く。 耳にしたとたん、一幅の風景画になる。 また、さーと降った雨後の風情も格別で、草木の吐息か、空気が甘く香ってそこここ煙る。
季語 5 時知る雨ときしるあめ
にわかに降る雨はいずれあがるもの。時知る雨は、夕立の癖を先回りしてよんだ余裕の命名である。 傘を持つまでもないと、肘で雨をしのいで駆け抜ける人もいる。
季語 6 早雨はやさめ
夕立はさっと降ってさっとあがるので早雨、通り雨とも言われる。 稲光がしてから稲を三束たばねる間に雷雨になるとして、三束雨みつかあめと言う地方がある。
季語 7 卯の花腐しうのはなくたし
卯の花の咲く頃は梅雨のはしり。。雨滴が白い花びらを濡らし、せっかくの花を痛ませる。 それを嘆いて、雨に卯の花腐しの名がついた。 卯の花降しうのはなぐたしとも言い、こちらは花の散るさまが浮かぶ。
季語 8 遣らずの雨やらずのあめ <
遣らずの雨は、帰ろうとする人を引き止めるかのように降り出す雨を言う。
季語 9 雨夜の月あまよのつき
雨の宵、月も星も厚い雨雲におおわれて見えない。 雨夜の月、雨夜の星は、思うだけ叶わないことのたとい。
季語 10 雨垂落あまだれおち <
雨垂落は雨垂れが落ちてあたるところを言う。雨打ちとも言い、強さも間隔も同じ音がつづく 雨垂石を穿うがつは、水滴ほどの小さな力でも、絶え間なく落ちつづければ石にも穴をあけることから、どんな小さいことでも、継続すればことが成るの意味がある。
季語 11 雨滴りあめしだり
雨滴りは雨垂れ。雨注ぎあめそそぎとも言う。 天から落ちてくる雨滴は汚れを知らなず、透き通った玉水で、玉は大切なもの、美しいものを表す。 軒の糸水は軒から滴り落ちる雨垂れで、雨のしずくのこと。。
季語 12 私雨わたしあめ
もしかしたらこの雨は、私のまわりだけ降り落ちてくるのではと、ふと思ってみたくなる。 ひところだけに降る雨には、私雨という美しい名がつく。
季語 13 暁雨あかつきあめ
朝に限って降る小雨を暁雨と言う。 朝雨、朝時雨とも言う。。 朝の雨は長くつづかず、昼ごろまでにやんでしまうことが多い。
季語 14 日照雨そばえあめ
いわゆる天気雨を日照雨と言う。 狐の嫁入りという言い方は、童話的で子供達にも親しまれる。。 雲の上ではさぞや盛大な婚礼が、と空想してみる。
季語 15 空知らぬ雨そらしらぬあめ
空知らぬ雨は涙のこと。涙がぽろぽろこぼれ落ちるさまは涙の雨、雨勝りは雨よりも激しく泣くこと。 着物の袖を濡らす意で、袖の雨、袖時雨とも表現する。 涙雨はちょっと降る雨のこと。
季語 16 時雨心地しぐれごこち
しっとりと濡れた秋景色は日本人の郷愁をかきたてる。 「しばし暮れる」「過ぐる」の意という時雨は、晩秋から初冬にかけて、降ったりやんだりする雨で、秋雨、秋の村雨とも言い、時雨になりそうな空模様は時雨心地。
季語 17 煙雨けむりあめ
霧と間違う雨は霧雨、煙雨とも言う。 雨濛濛あめもうもうとは、霧雨が降って、あたりが薄暗くなるさま。
季語 18 御降りおんふり
元旦に降る雨は、その年の豊作の兆し。 新年の雨にのって富が降りてくると言う、素朴で美しい発想である
季語 19 寒九の雨かんくのあめ
寒は二十四節気の小寒と大寒のことで、立春前の寒さが一番厳しい時期です。 寒九の水とは寒に入って九日目に汲んだ水のことです。薬になると信じられた。 同じ日に降る雨を寒九の雨と言う
季語 20 北雨吹きたしぶき
北側から吹き付ける雨風を北雨吹と言う。 強い勢いで家を打ち、傘を飛ばす。語感だけでも、ずっpり水びたしになる感がある。