草木のことのは



【 春 】  【 夏 】  【 秋 】  【 冬 】 

■ 春の章


季語 1   花巡りはなめぐり

花よりだんごの花ではなく、ひっそりと桜の花を求めて山野を訪ねること。


季語 2   初草はつくさ

春の初めに、真っ先に萌え出る草を言う。
希有なも、かすかなものを美しく表現する言葉としても使われた。

季語 3   駒返る草こまがえるくさ

枯れ草となって、冬を過ごした草が、春を迎えてまた芽吹く。
年老いたものが若々しいようすを取り戻すことを駒返る草という。


季語 4   葱青そうせい

葱はネギという字だが、葱青の本来の意味は、大地から萌え出でたすべての草木の芽の色をいう。
大地の緑が芽吹くさまを表わす。

季語 5   草若葉くさわかば

植物の芽は光の来る方向に向かって成長する。
その芽が黄から緑へ移行期に、植物は透けるような若草色になる。

季語 6   草朧くさおぼろ

日が落ちた後の草原は、物影がぼんやりとして輪郭を失い、草の香だけが立ちのぼる。
日暮れて漠とした草原の情景を草朧という。

季語 7   雀隠れすずめがくれ

萌えでた草は日に日に延びて、原野を埋める。
雀隠れの草に、野を駆ける子供の靴もかくれる。

>季語 8   風の娘かぜのむすめ

アネモネはギリシャ語で風の娘という。
ギリシャ神話では、美と愛の女神アフロディテと美青年アドニスの悲恋物語に登場する。

>季語 9   木の芽起こしこのめおこし

その年の初めての南風は、万物を力強く呼び戻します。
木の芽起こしの風として待たれ、この風が吹くとようやく春が訪れます。

季語 10   柳煙りゅうえん

柳にかかる靄のことを柳煙といいます。
柳は、枝垂れた枝の一本一本からいっせいに芽吹くので、木全体が淡い緑色に包まれます。

季語 11   飛花ひか

桜が散るとき、まっすぐに地面をめざす花びらはない。
ひらひらと舞いながら、風が吹けばそれにのる。散る花びらのさまをいいます

季語 12   居立ち草いたちぐさ

レンギョウは、葉に先立って黄色い花がいっせいに咲く。
幾株も並んで植わっているいると、一面黄色い炎のよう。枝がまっすぐに伸びるので居立ち草の名もある。

季語 13   花暦はなごよみ

気象衛星も長期予報もなかった時代、農耕の目安は花の開花にならった。
いろいろな花々の開花を順に並べて暦にしたで、花暦とよんだ。

>季語 14   げんげげんげ

蓮華草のもともとの和名はげんげ。
根にバクテリアが共生するため、かっては重要な窒素肥料として植えられたが、いまでは田植えが早まったのと、化学肥料の台頭で姿を消してしまった。

季語 15   道の見張りみちのみはり

踏まれても踏まれても負けない雑草、という表現は草に対して失礼かもしれないが、草の強さはそれ以上です。
道の見張りはドイツでの名で、人の通ったところにまた生えて、ここが道だと教え続ける。

季語 16   花綵列島かさいれっとう

日本列島は大小三千余りの島々からなる。
ゆるく弧尾を描く形は、花を編んでつないだ花飾りのようであるから、花綵列島とか花綱列島となどとも呼ばれる。

季語 17   星の瞳ほしのひとみ

紫の小花をばらまいたように見えるオオイヌノフグリ。
名前で損を強いられているぶん、清楚な色と形に恵まれ、日当たりの良い道端でさいている。摘めば紫の涙のようにポロリと落ちる。

季語 18   神知り花かみしりばな

スミレの紫色は、かそけくて神秘で、うつむき加減の姿が綺麗です。
信州には神知り花という名が残っているという。

季語 19   君影草きみかげそう

スズランは五月ごろの花。花の小ささが白さをいっそう際立たせる。
君影草というロマンチックな別名もある。

季語 20   水陰草みずかげそう

水のほとりの物陰にひっそり生い出た草をいいます
命の表れに、思わずどこから来たのと聞いて見たくなる。