オオヒシクイってどんな鳥



10月〜11月になると霞ヶ浦に大きな鳥の群れが越冬のために渡ってきます。
北の国からの渡り鳥、ヒシクイの亜種オオヒシクイです。

◆オオヒシクイはガンの仲間  オオヒシクイは日本で冬を過ごすために、ユーラシア大陸の亜寒帯、寒帯からやって来るガンの1種です。
日本で観察が記録されたガンの仲間は10種、そしてヒシクイには3亜種います。
現在まとまった数で渡来している種には、マガン、ヒシクイ(亜種ヒシクイ・亜種オオヒシクイ)コクガンの3種です。
これまでシジュウカラガン、ハクガンは日本に於ける絶滅が心配されていましたが、弊会顧問でもある、雁の里親友の会、池内俊雄氏等の手によって、徐々に復活の兆しが見えることは喜ばしいことです。

 

亜種

サカツラガン @オオヒシクイ

ヒシクイ Aヒメヒシクイ

ハイイロガン Bヒシクイ

マガン

カリガネ

マガン属 インドガン

ガンの仲間

ハクガン

ミカドガン
コクガン属 シュジュウカラガン
コクガン


◆旅をする鳥
 オオヒシクイは季節によって住む場所を変える渡り鳥で、晩秋になると北国からやってきて翌春まで日本で過ごします。
このような渡りをする鳥を「冬鳥」と呼びます。
 渡り鳥にはこの他に、春になると東南アジアなどからやって来てヒナを育て、秋になると南に帰る「夏鳥」と、北方の繁殖地と南方の越冬地を往復する途中、春と秋に日本に立ち寄る「旅鳥」がいます。
 一方、大きな渡りをせずに、日本国内で季節を通して生活している鳥(留鳥)もいます。
「なぜ渡り鳥と留鳥がいるのか?」・・・答えはエサや住みかに深い関係があるようですが、渡り鳥はその鳥が生き残るためのひとつの手段であることは明らかです。


◆ヒシクイはオオヒシクイとヒシクイ? 鳥1  日本に渡来するガンの仲間のヒシクイには2つの系統(タイプ)があります。
その2つのタイプは種よりも下の単位で”亜種”と呼んでいます。
つまり日本に渡来するヒシクイ(種)は、亜種のヒシクイと亜種のオオヒシクイです。
 霞ヶ浦で見られるのはオオヒシクイの方です。
 この外にごく僅かですが亜種ヒメヒシクイが新潟(2003年3月)、小笠原群島(聟島)で確認されています。


◆オオヒシクイてこんな鳥

こんな鳥  こんな鳥
写真はオオヒシクイです  全長は89〜98cm        翼(つばさ)を広げたときの長さはおおよそ1.8〜2m

こんな鳥


どこから越冬に来るの
地図 ◆オオヒシクイはどこから来るの


 オオヒシクイはどんなルートを通って渡りをするのか、日本とロシアの研究者が共同で調べました。
カムチャッカ半島の繁殖地で標識を付けたオオヒシクイが日本で発見され、カムチャッカ半島からヒシクイが飛来していることが分かりました。
また日本への渡来ルートはサハリンを経由するルートと千島列島を伝わって来るルートが推定されています。
1999年には、ズベズドカン湖の上流の川で、雛を連れたオオヒシクイを確認できました。
しかし、稲波干拓に来るオオヒシクイの繁殖地や渡りのルートは、まだわかっていません。




ガン類の保護

◆狩猟鳥から保護鳥へ
 万葉の昔から和歌に詠まれているように、ガンの仲間は日本では古くから人々に親しまれてきました。
江戸時代までは日本各地で沢山のガンが見られたのですが、明治以降は狩猟が一般にも認められ、さらに越冬地だった湿地が開発で失われたことによって、大きな打撃をうけました。
第2次大戦後には、ガン類は絶滅の危機にまで追い込まれてしまいました。
渡り鳥は国境を越えて移動するので、国際的に協力をし合わないと保護活動は成り立ちません。
現在では、ガン類の生態について日本とロシアで合同調査が進められています。


 日本国内では、ガン類のうち最後まで狩猟が認められていたヒシクイとマガンが1971年に狩猟鳥から外され、同時にヒシクイ・マガン・コクガンが天然記念物に指定されました。
日本のガン類はすべて法的に保護されるようになりました。以来、日本への渡来数は少しずつ増えています。