冬のことのは






冬 の 章 T


季語 1   冬めく (ふゆめく)

どこか冬らしさを感知することで、秋のうちに感じる冬の予感と、冬になってから感じる、冬らしくなったと言う実感が冬めくの意に定着しています。


季語 2   冬日和 (ふゆびより)

〔冬晴〕〔冬麗〕

小春日和のあとにやってくる冬の晴れた日をこう呼んでいます。
雪が降ったりした後に晴れることが多く、その晴天が何日も続いたりします。


季語 3   初時雨 (はつしぐれ)

これからやって来る時雨の季節の先触れとして降るのが初時雨です。
実際に降る雨よりも、和歌などの文学の中でのこしらえられた情感の方が強いだけに、初時雨にもことのほかその情感が濃厚です。


季語 4   凩 (こがらし)

〔木枯らし〕

この風が吹き出すと、冬の到来を実感します。
いったんこの季節風が吹き始めると、日本全土が冬の様相を深めます。


季語 5   初霜 (はつしも)

寒いなと思い朝の戸を開けると、庭一面に霜が降りていたりしますが、初霜の降りた日は内陸部が早く、海沿い地が遅い傾向にあります。


季語 6   冬枯れ (ふゆがれ)

〔枯るる〕〔冬枯道〕

初冬には緑や紅葉の色を残していました風景も、冬の深まりと共に、常緑の木々を除いて、森も林も遠山も、そして川辺の草草も、すべて枯れ色になります。


季語 7   霜枯 (しもがれ)

霜の降りた朝などは木の葉も草草もいっぺんに黒ずんで枯れて行きます。
これも冬枯れの季語の範囲ですが、霜枯れの方は原因と結果が明確です。


季語 8   朽葉 (くちば)

地に落ちた木の葉が、長い時をかけて朽ちたものをいいます。
池などの水底に層をなしてたまっていることもあり、朽葉色と言えば赤みを帯びた黄色の色名です。


季語 9   枯蔓 (かれづる)

〔蔓枯れる〕

森や林を一面に覆っていた自然薯(じねんじょ)、通草(あけび)、野葡萄、藤などが枯れて葉を落とすと、森や林がやや小さく見えてきます。
また美しい紅葉うを見せてくれた蔦(つた)が葉を散らし蔦だけになると、何とも無残に見えてくるものです。


季語 10   冬紅葉 (ふゆもみじ)

〔残る紅葉〕

もちろん紅葉の盛りは晩秋の景ですが、ともすると、その盛りを冬に持ち越す木々もあります。しかし大方の紅葉は散って数枚を枝に残したりもします。
それらが朝や夕方の強い光に映えている場合にあうと、秋の名残を感じるものです。


季語 11   帰り花 (かえりばな)

〔帰り咲き・二度咲き・狂い花〕

小春日和に誘われて、時期はずれの花を付けるのが帰り花です。
春咲きの花が、いったん秋の寒さを経て後、小春を春と勘違いして花を咲かせることを言います。


季語 12   冬の鳥 (ふゆのとり)

〔寒禽(かんきん)・かじけどり〕

鳥達がさかんに活動するのは、春から秋にかけての期間で、その間に巣を架け、卵を産み、雛を育て、渡りをします。
ところが餌も少ない冬は、体力を温存し蓄積し、春の渡りに備える期間にあたります。


季語 13     冬構 (ふゆがまえ)

〔冬構えする〕

冬を前に真っ先に行う防寒、防風、暴雪の万般の作業が冬構です。
北窓を閉じ、目張りををすることから、風除けを作ったり、雁木を修繕したり、庭木に雪吊りを掛けたり、藁で囲ったりします。
雪の深い地方では、今でもまだ昔通りの作業が行われます。


季語 14     冬耕 (とうこう)

〔寒耕・土曳き・客土〕

二毛作地帯の田圃ですと、稲を刈った後、鋤起し土塊を砕いて条をきり、麦を蒔きます。
一毛作地帯でも、稲を刈り取った後、荒起しをしておきます。


季語 15     冬の朝 (ふゆのあさ)

〔冬曙・寒暁・冬暁〕

いずれの季節でもそうですが、朝はその季節の輪郭がはっきりしています。
戸を繰ると寒気が引き締まり、庭が一面の霜だったり、吐く息が真っ白で、日の出の輝きが透明だったりと、ふゆのが実感できる時刻です。


季語 16     冬の暮 (ふゆのくれ)

〔冬の夕べ・冬の宵・寒暮〕

「暮」も「夕」「宵」も同じ季語として並記されていますが、使う場合は微妙な語感に気を配る必要があります。
「暮」には明暗が明確ですし、「夕」には時刻の移ろいが見え、「宵」には夜に重点をおく華やぎをかんじさせる働きがあります。


季語 17     冬夕焼 (ふゆゆうやけ)

〔寒夕焼・冬茜・寒茜〕

壮大なところから、夕焼けといえば夏の季語ですが、冬夕焼もまた空気が澄明なところから、色が鮮やかです。
太陽光線は大気を通過すると距離が長いので、その間に青光セが散乱し、波長の長い赤光線だけが見える現象が夕焼けです。