秋のことのは






秋 の 章 U


季語 1   秋の日 (あきのひ)

〔秋日〕〔秋日影〕
秋の一日のことも、秋の太陽のことも秋の日といいます。
秋の一日は慌しく暮れるので釣瓶落とししても呼ばれますが、空気が乾いて日差しも強いので、陰影もくっきり見え、入日は他の季節よりも美しく見えます。



季語 2   秋茄子 (あきなす)

〔秋なすび〕
秋になってから採れる茄子は、形は小さいけれど種がなく、皮が引き締まっていて、特に漬物によいとされます。
ですが「秋茄子は嫁に食わすな」を嫁いびりの諺ととっていますが、逆説もあります。
「種がない」を「子種」ととって、子供が生まれにくくなっては困る姑の心遣いとする説です。



季語 3  後の衣替え (のちのころもがえ)

〔秋の衣替え〕
初夏の衣替えに対して、晩秋に袷(あわせ)から綿入れに替えることを、こう呼びます。
今どき綿入りを着る人はまずいませんから、薄手の地のものから厚手の地の長袖のようなものに着替える切り替えの時季と考えてよいでしょう。



季語 4  簾名残 (すだれなごり)

〔秋簾〕
簾を外そうと思いながら先延ばししてきたが、いよいよ・・・という情感が簾名残でしょう。
ほかは外しても西日の強く当たる窓の簾は外せない、というのも名残かもしれません。



季語 5  野菜の秋蒔き (やさいのあきまき)

〔秋蒔き野菜〕
春や初夏の野菜の多くは秋に蒔きますので、この時期の農家は結構忙しくなります。
蕪や牛蒡がそうですが、大根のように秋に蒔いて冬に収穫するものもあります。
また春に花を楽しむ草花も、秋に蒔きます。



季語 6  虫時雨 (むししぐれ)

〔虫すだく〕
秋も盛りの頃には、ちょっと喧騒を離れると虫時雨に出会います。
耳を澄ますと、何種類かの虫の音が届きます。
時雨とは、まさに絶え間なく鳴く、虫の音の形容です。



季語 7   虫合わせ (むしあわせ)

〔虫尽し〕
いろいろな虫を持ち寄り、その音色や形状の優劣を競う遊びで、貝や菊、扇、絵などの優劣を競う物合わせの一種です。



季語 8   花野 (はなの)

〔花野原〕
人為的にこしらえた花圃や歌壇、庭園の花ではなく、自然の中に咲き乱れる野生の花のことを言います。



季語 9   秋の七草」 (あきのななくさ)

〔秋七草〕〔秋の名草〕
春の七草に対しての秋の七草は、「万葉集」の山上憶良の次の二首の旋頭歌から定着しました。
「秋の野に咲きたる花を指(および)折りかき数えれば七種の花」
「萩の花尾花葛花撫子の花女郎花また藤袴朝顔の花」
山上憶良が「万葉集」で挙げた七草の中に桔梗は入っていませんでしたが、憶良の言う朝顔が当時の桔梗だろうと言うことで、桔梗が七草に入りました。



季語 10   月代 (つきしろ)

〔月白〕〕
月がまさに昇ろうとして、東の空が明らむことを月代とか月白と呼んで、名の月を賞でる折のたまらない一瞬です。



季語 11   宵闇 (よいやみ)

〔夕闇〕
陰暦の八月十五日の名月は、太陽が沈むとまもなく昇りますが、十六夜(いざよい)、立待月(っちまち)、居待月(いまち)・・・と、日を追って遅くなり、二十日の月の更待月(ふけまち)の頃になると、名月より三時間も遅れて月は昇ります。
これらの月の出までの闇を宵闇と言います。



季語 12   名月 (めいげつ)

〔十五夜〕〔満月〕〔望月〕
陰暦八月十五日の仲秋の満月です。
一年のうちで、この夜が最も澄んで明るく、秋草の花、競う虫の音、それに露と、秋の風物がそろう時期です。



季語 13   弓張月 (ゆみはりずき)

〔弦月〕〔半月〕
七日から八日にかけての上弦の月と、二十二、三日の下弦の月を、その形から弓張月といいます。



季語 14   水澄む (みずすむ)

秋の長い秋霖(しゅうりん)も過ぎ、台風も日本本土から遠ざかる頃の川や海の透明さを、水澄むとしている。
海や湖沼といった自然界に限らず、そこに透明さ感じます。



季語 15   露時雨 (つゆしぐれ)

風のない晴れた夜などは、放射冷却によって温度が低くなって、草や木の葉に沢山の水滴ができますが、その量が時雨が降ったようだと言うのが、露時雨です。
草原を歩くと、足から腰あたりまでずぶ濡れになります。