秋のことのは






秋 の 章  V


季語 1  秋時雨 (あきしぐれ)


同じ秋の雨でも区別されているのが秋時雨で、平野部より山の外周部に降ります。
晴れているのに降ってきたり、降ってもすぐ止んで、思いがけなく秋の虹を見せてくれたりもします。



季語 2  桐一葉 (きりひとは)

〔一葉落つ〕
桐の落葉を秋の象徴するものとして、和歌や連歌、俳諧で多く詠まれきました。



季語 3  冷やか (ひややか)

〔秋冷〕
初秋は、風や朝晩に感じる「涼」が主体ですが、仲秋ともなると、幾分感覚が進んで、「冷」を感じるようになります。



季語 4  秋彼岸 (あきひがん)


秋分の日をはさんで七日間が秋彼岸で、法要や墓参を行い、祖先の供養をします。
単に彼岸と言えば春の彼岸のことですから、秋の場合はわざわざ秋彼岸とか後彼岸と表現します。



季語 5  白露 (はくろ)

〔白露の節〕
二十四節気の一つで立秋から三十日ですから、陽暦では九月七日か八日にあたります。
美しい露を結ぶ時期の意ですから、そろそろ周囲に露の目立ち始める時節です。
露が下り、秋の気配が見え始めることを示す言葉に「白露降る」があります。



季語 6  野分 (のわき)

〔野分立つ〕
野分とは草木を吹き分けるの意で、秋の台風のことです。



季語 7   秋気 (しゅうき)

〔秋の気〕
秋の気配、秋らしい感じ、秋の大気などを総称してこう呼んでいます。



季語 8   秋高し (あきたかし)

〔天高し〕
秋の長雨・秋霖(しゅうりん)が済むと、空は澄み高く感じられます。
鰯雲や鯖雲などの巻積雲をはじめ、巻き雲など上層雲も秋高しの演出をしてくれます。



季語 9   風の盆 (かぜのぼん)

〔雨の盆〕〔おわら祭〕
風の盆とは、二百十日が無事であることを祈る日ですが、養蚕と和紙で栄えた富山県婦負郡八尾町では、毎年九月一日から三日まで風の盆を行い、終夜「越中おわら」の町流しをします。



季語 10   中秋 (ちゅうしゅう)

〔秋半ば〕〔仲の秋〕
秋を初、仲、晩と三つに分けた真ん中の月、陰暦の八月を指しますから、陽暦では九月頃と冬への予感が綯い交ぜになった季語と言えます。
十五夜の月を仲秋の名月と言いますし、単に仲秋だけでも、この名月を差します。



季語 11   秋出水 (あきでみず)

〔洪水〕
単に出水と呼ぶと、梅雨の長雨による出水のことで夏の季語です。
台風による川の氾濫や、秋の長雨による出水を秋出水と言います。



季語 12   新涼 (しんりょう)

〔秋涼し〕
「涼し」と言えば夏の季語で、暑さの中に「涼し」を感取しようととした見立ての語感でしたが、新涼となると、肌で感じるじかの涼しさと言えます。



季語 13   処暑 (しょしょ)

〔処暑の節〕
二十四節気の一つで、立秋から十五日目ですので、陽暦では八月二十二、三日頃にあたります。
それまで劣勢だった大陸の冷たくて乾いた高気圧が優勢になる頃で、残暑も一息つける時節です。



季語 14   秋めく (あきめく)

〔秋づく〕
暦の上で明確な秋となる立秋とは違い、暑い中にもどこか秋の気配が感じられるという、季語が秋めくです。
朝夕吹く涼風に、或いは稲の垂れ穂に、果実の色づきなどに、それとなく秋を感じる風情です。



季語 15   初秋 (しょしゅう)

〔新秋〕〔早秋)〕
暦の上では立秋から秋ですが、吹く風に心なしか秋を感じたり、木の葉の黄ばみや虫の音、花々の移ろいに秋の予感を感じるような受け止め方が初秋の感じ方です。